桑田 知明


 私は、視覚と触覚が相互作用する、“さわる”デザインを制作し、研究しています。この研究は、一方の感覚による情報伝達の表現が先行し、後から他感覚の情報を重ねるのではなく、両感覚が同時に、相互作用する表現の実制作を行っています。この研究の背景には、手で触れる(さわれる)ということが、必ずしも触覚情報として機能しているとは限らないという点があります。何を伝えたいのかという明確な意図があってこそ、触覚表現は“さわる”という行為を通じて、情報を伝達するのです。また、触覚に依存している人のためだけではなく、視覚に依存している人――私自身を含め――にも触覚表現が伝わるようなデザインを目指すことで、より多くの人の感性に寄り添う、心のこもったデザインが可能になるのではないかと考えています。この研究を通じて、“さわる”という行為をどのように捉え、どのようにデザインへと昇華させるか、授業では多様な可能性を模索していきます。

 

2023年 京都市立芸術大学ビジュアルデザイン領域博士(後期)課程修了。美術博士。

グラフィックデザイナー。同大学総合デザイン専攻非常勤講師。

論文『視覚と触覚による情報伝達デザインの研究-触る(さわる)デザインと触れる(さわれる)デザインの制作-』

日本タイポグラフィ年鑑2023 ロゴタイプ・シンボルマーク 審査委員賞

 

書籍「ユニバーサル・ミュージアム: さわる!“触”の大博覧会」寄稿。

書籍「視覚障害のためのインクルーシブアート学習-基礎理論と教材開発-」寄稿。

雑誌「教育美術」2023年10月号

 

https://www.chiakikuwa.com/