大西 穣


 西洋音楽史は、リベラルアーツ教育の中核をなす学びの一環として、重要な位置を占めています。音楽史的な文脈を身につけることは、表面的な技術や流行を学ぶだけではなく、広範な文化的理解と知的探求の精神を涵養することに他なりません。リベラルアーツの理念である「自由になるために学ぶ」という信条の下、西洋音楽史は、多様な文化的背景を持つ作曲家たちの作品を通じて、社会や歴史、そして人間の情感に光を当て、それらが宗教的、歴史的、そして社会的にどのように音楽が作られ、受容されてきたのかを理解していくことを促します。異なる時代や文化における人々の価値観や世界観、人間関係の変化を学び取り、多様性に満ちた現代に活きていくための知恵となるのです。

 

 わたし自身、クラシックピアノやジャズのビッグバンド、ロックバンドやブラジリアンのバンド、DJまで経験する中で、人々の音楽に対する価値観や趣向性が多様であること、そしてそれぞれがとても深いことにいつも驚いてきましたし、多くを学んできたと感じています。またこれからも学んでいくことになるでしょう。

皆さんの音楽を学んでいく旅のお手伝いができたらと思います。

 

【2004年国際基督教大学大学卒、2009年バークリー音楽院卒。主な訳書にジョン・ケージ著『作曲家の告白』(2019 アルテスパブリッシング)、ジェローム・スピケ著『ナディア・ブーランジェ』(2015 彩流社)。 主な著作に『AA 五十年後のアルバート・アイラー』(2021、共著、カンパニー社)、主な論考に「小澤征爾の世界と「ふれる」」(『図書』 岩波書店  2022年6月号)、「レイ・ハラカミと「うた」」(『ユリイカ』 青土社 2021年6月号)がある。】