大西 直樹


 本務校だった国際基督教大学で、私はアメリカ文学、アメリカ研究を中心に40年ほど教えていましたが、学歴としてはICUの他に、アメリカのリベラルアーツ大学として代表的なアーマスト大学も卒業したので、二つのリベラルアーツの学部教育を体験をしました。その影響で、日本の大学教育では文学研究というと作家研究に落ち着き、特定の作家を研究し専門的に教えるということが一般的ですが、自分としては、作家研究をするにしても、その人物を取り巻く歴史的、社会的、宗教的背景を充分に理解することなく、文学作品の理解は成り立たないと信じています。そのため、学際的、あるいは比較文化的なアプローチが必須で、逆に言えば、講義としては一見脱線となることが多いのですが、脱線にこそ講義の妙味があると思っています。作家の文化的背景となると音楽や美術も含まれ、音楽家や画家と作家がどのように影響し刺激しあっていたかなども扱ってきました。たとえば、シェイクスピアの古典「ロミオとジュリエット」が、「ウェストサイドストーリー」や、バレーの舞台で演じられ、音楽ともなり、広い影響を広げていることを具体的に作品を取り上げて論ずる授業をしていますが、複眼的な視点を育て豊かで深い社会と人生のあり方を考える契機を提供できる授業を考えています。以前は大学院に進み専門家となっている学生を何人も育ててきましたが、研究者養成とは違ったアプローチを常に意識して講義したいと思います。

 

ピアノ演奏動画 https://www.youtube.com/watch?v=lT5zcJl95Cw

 

【1972年国際基督教大学教養学部卒、1981年同大学院卒 1990 Ph.D、単著に『ニューイングランドの宗教と社会』(1997 彩流社)『ピルグリムファーザーズという神話-作られた「アメリカ建国」』(1998 講談社、第2版2004)、『エミリ・ディキンスン-アメジストの記憶』(2017 彩流社)がある。】