社会にはさまざまな「バリア」(障壁)があります。目に見える物理的なバリアの他に、目には見えない心理的バリアや法制度的バリアもあります。この目に見えないバリアは、差別と言い換えても良いでしょう。
障害やその他の理由でさまざまなマイノリティの立場におかれている人たちは、こうした有形・無形、直接・間接のバリアや「生きづらさ」に日々苦しめられています。では、どうすれば、こうしたバリアを取り除き、「生きづらさ」から解放されることができるのでしょうか。
そのための重要なアプローチの一つは、「学ぶこと」だと私は思います。なんらかの事情で大学で学ぶ機会が得られなかった人。かつて学んだけれど、今1度、学びなおしたいと思っている人。そう考える人が、どのような属性や条件の下で生活していても、「学ぶこと」は必ず生きる上での新たな力になると思います。
「バリアフリー教養大学」は、バリアを取り除くための切り口やヒントを学び、学生自らが探求することを励まします。そして、そうしたプロセスを通して、学生自身が生きるための方策を発見し、新たな生き方を創造することを目指しています。
そこで重視されるのは、一方通行的な知識の伝達ではなく、対話をとおして、学生と教員が共に学びあい、共に研究する姿勢です。そして、そこで展開される教育活動は、幅広く、しなやかで、自由な発想によって生み出される営みであり、それはすなわち、リベラルアーツです。
リベラルアーツは、学生の自由な考え方や批判的知性を伸ばし、また学生自身が新たな自己を再発見して行くことを促す教養教育のことです。
教員一同、未知の学生のみなさんとの出会い、その出会いをとおして生み出される創造的知見の誕生に、心踊る思いでいます。さあ、学びを共にしましょう。
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(プロフィール)
福島智(ふくしま・さとし)
1962年神戸市生まれ。博士(学術)。専攻は障害学。9歳で失明、18歳で聴力も失い、全盲ろう者となる。
1983年、東京都立大学人文学部教育学専攻に入学。盲ろう者としては、日本発の大学進学となる。
同大大学院博士課程、日本学術振興会特別研究員などを経て、1996年7月に同大人文学部助手、同年12月金沢大学教育学部助教授に就任。
2001年度に東京大学先端科学技術研究センターバリアフリー分野主任教員(助教授)に就任。
2008年に同センター教授に就任。
2023年度から同センター特任教授。
盲ろう者で大学の正規教員に就任した(1996年)のは、世界初とされる。
著書に、
・『渡辺荘の宇宙人』(素朴社、1995年、電子版で2024年に新装版発刊予定)
・『盲ろう者とノーマライゼーション -- 癒しと強制の社会をもとめて(明石書店、1997年)
・『盲ろう者として生きて -- 指点字によるコミュニケーションの復活と再生』(明石書店、2011年。英訳版『Living Deafblind』、東京大学出版会より2024年発刊予定)
・『ぼくの命は言葉とともにある』(致知出版社、2015年)
・ 『盲ろう者と障害学』(生活書院、近刊予定)他。
本学顧問の福島智先生の生い立ちを描いた映画
『桜色の風が咲く』が2024年1月3日(水)14:00~ NHK Eテレで上映されました。
桜色はお母様役の小雪さんのイメージにぴったり。とても素敵な映画です!DVDもあります。
映画の公式サイトは以下。バリアフリー予告編があります。製作には福島先生ご自身が細部にわたって関わられた上質の映画です。