薬師 美芳


私はトランスジェンダーとADHDのダブルマイノリティです。幼い頃は多様な性について正しい情報を得る機会がなく、高校時代には列車に飛び込もうとするほど思い詰めました。トランスジェンダーであることを初めて打ち明けた友人が、そのままでいいと受け入れてくれたことで救われました。2009年、大学在学中にNPO法人「ReBit(リビット)」という学生団体を立ち上げました。

 

「子どもは産めるのか」と就職活動で聞かれ、就職先でも先輩から「性別はどちらなの?」と笑いのネタにされることもありました。誤字脱字がないようにメールや書類を作成することも苦手でした。細かいことに注意を払うことが苦手なADHDの特性だったのですが、「やる気がないからミスをする」「頑張らないと、今後、性的少数者は採用できない」と言われたことも重なって、自律神経失調症になって退職しました。

 

昨年(2022年)精神障害や発達障害があるLGBTQ(性的少数者)らの就職を支援する就労移行支援事業所「ダイバーシティキャリアセンター」を、東京都渋谷区に開設しました。性的少数者に対する無理解から福祉サービスの利用に不安を抱えたり、ハラスメントを受けたりした人たちが、安心して支援を受けられるサービスを目指しています。

 

【早稲田大学大学院卒。20歳でReBitを設立。行政・学校・企業等でLGBTやダイバーシティに関する研修、LGBTなどのマイノリティへのキャリア支援等を行う。青少年版国民栄誉賞と言われる「人間力大賞」受賞、ダボス会議が選ぶ世界の若手リーダー、グローバル・シェーパーズ・コミュニティ選出、オバマ財団が選ぶアジア・パシフィックのリーダー選出。共著に「LGBTってなんだろう?」「トランスジェンダーと職場環境ハンドブック」等がある】。